小説

 虫医者②


よく晴れた日だったので、講義室の窓際の席に座る、ふと窓の外を見ると、大きな桜の木々が目の前に見えた。綺麗な桜だな。ん?


よく見ると窓には1匹の蛾が張り付いていた。


日に当たって気持ちよさそうだなと、独り言のように呟くと、


私は悲しんでるです。。


と小さな声とも言えない声で返事があった。少しびっくりしたが、先程の蟻の時に小さな声は聞いていたので、そこまで驚かなかったが、違和感を感じないわけなかった。


悲しい?なんで?


先程身内が亡くなりまして、葬儀もできず、蟻に持っていかれてしまいました。


なんと、通学途中で見たあの蟻の行列の先にあった、蛾の死骸が、今窓に張り付いている蛾の身内だったとは。。。


食物連鎖という言葉を知ってるかい?


知ってますとも。それゆえにこの世は理不尽でなりません。


頭のいい蛾なのかもしれない、、と感心していると、講義をはじめるために、教授が教室に入ってきた。


スライドをみせますので、窓際の生徒の方はカーテンを閉めてください。


僕はカーテンを閉めながら、窓にへばりついている蛾にまたねと言った。

蛾はそれを聞くと何処かへ飛んでいってしまった。

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