キセキ

昨日はイントロのセッションに行きました。人と話すのが苦手なので、最近はそういう場所に行くと本を持って行く様にしています。僕にとってイントロのセッションは東京のセッションの場では唯一好みのセッションで、一線で活躍している人はもちろん、ジャズ愛を凄く感じれて、居心地が良いと思います。でも、そう思えるようになったのも、ジャズをたくさんレコードで聴くようになったからです。出不精で人が苦手な為、年に何回かしかセッションには行きませんでしたが、今年からは変えようと思い、今年初めてセッションに行きました。平日だし、空いているかもしれないと思ってお店に入ると、何故かドラマーがすでに4人。なかなか混んでいて、僕としては人が多いと目立たなくていいから奥のカウンター席に隠れるように座って、最近読んでいる1970年代の本、チャーリーパーカーの伝説を読みながらセッションに耳を傾けていました。それから少しして、山田穣さんが来店されました。その時、申し訳なさで胃が潰れそうになりました。

数年前、僕は悩んでいました。悩みを説明できず、周りの人に話しても理解してもらえず、きっと僕の説明が下手すぎてただのエゴに聞こえてしまったのだと思いました。そんな時に穣さんに相談したところ、音楽の事、ジャズの事、そしてレコードを教えていただきました。レコードを聴く事で、悩みは無くなりました。それから何回か僕は穣さんの所に行ってはレコードを聞かせていただき、自分の家に、レコードを聴く環境までサポートしていただきました。僕は僕のやり方で、色々感謝の気持ちを伝えました。妻もそれに協力してくれました。それでも、僕はやはり言葉で傷つけてしまい、怒らせてしまって穣さんから、二度と連絡するなと言われました。僕は申し訳なさで、何日沈んでいたかわかりませんが、ジャズにハマって、レコードを聴いているうちに、レコードが僕には支えになっていました。いつの日か穣さんには演奏で恩返ししたいと思い、いつの日かジャズミュージシャンとして、ひとりの人間として、認めてもらいたいと思いました。

レコードを聴きはじめてから約3年、ジャズの奥深さを知って、自分の浅はかさを知って、自分のなりたいものが見つかって、その為にはすごい年月がかかる事も知って、家にこもってレコードに合わせて練習ばかりしていて、久しぶりにセッションに行ったのが昨日です。

穣さんは軽く挨拶をしてくれました。僕はどんな顔をしていたか覚えていません。自分の順番を待っている間、穣さんの音楽を聴いて驚きました。レコードから聞こえる音よりも凄くて、物凄くスイングしていて、暖かい花が咲いているようで、何と表現していいのかわからないくらい素晴らしかったので、本を閉じて、聴き入りました。それと同時に、僕はこんなにすごい人に、ジャズの事を何にもわからないのに悩みだの何だのを相談していたのかと、自分の浅はかさ、愚かさ、未熟さを痛感して、自分の番が来るのが怖くなりました。きっと一緒には演奏してもらえないだろうと、まずその事が頭をよぎりました。それでも、こんな物凄い演奏が聴けただけでも今日は良かったと思いました。そしてあれからどれだけ自分が変わったのか、僕の音を聴いてもらえるかもしれないとも思いました。ただ、僕の中では穣さんに聴いてもらえる事自体、何年もかかる事だと思っていたので、まさかの展開にもう、心の中はぐちゃぐちゃになりました。自分の番になって穣さんはステージから降りることはなく、僕がドラムの席についても、ステージにいらしたので、共演ができるんだ!とぐちゃぐちゃな心の中の1つのぐちゃぐちゃが、するりと無くなりました。

枯葉。この機会に与えられた曲。僕はおどおどした気持ちは演奏の時はなくなります。いかにスイングさせるか、いかにみんなを幸せにさせるか、それだけを考えます。そうしてはじまった曲の、最初の一音から終わるまで、僕は一生忘れません。
そして今朝、穣さんからお電話をいただきました。過去の僕の過ちを許していただけた事もまた、僕には大きな出来事です。

この様な奇跡が、縮こまった心に春をもたらすのかもしれません。

これからも頑張るぞ!!

コメント

人気の投稿